私は京都が大好きで季節ごとに訪れていますが、今回はその中でも特に奥が深く何回行っても新しい発見がある八坂神社の祭礼で、1ヶ月にわたって様々な神事が行われる祇園祭の紹介です。
祇園祭は主に先祭(さきまつり)と後祭に分かれており、特に有名なのは7月17日の前祭山鉾巡行ですが、それ以外にも至る所でいろいろな神事が行われ、私自身その半数以上は体験しています。
今年は7月15日から18日までの期間の祇園祭を紹介します。
今回は祇園祭第七弾として「祇園祭後祭山鉾建」の紹介です。
7月18日、前祭(さきまつり)の華やかな熱気がひと段落した街中では、次なる「後祭(あとまつり)」の巡行に向けた準備、「山鉾建て」が着々と進められています。
普段は何気なく人が行き交うオフィス街や歴史ある京町家の通りが、この時期ばかりは巨大な伝統工芸の工房へと姿を変えるのです。
通りに足を踏み入れると、さっそく「カンカン」「トントン」という心地よい木槌の音が聞こえてきました。
立派な木組みの骨組みが路上に現れ、職人さんたちが手際よく組み上げを行っています。
巨大な大船鉾(おおふねほこ)や鷹山(たかやま)、南観音山(みなみかんのんやま)といった山鉾が、京都の街並みの中で少しずつその全貌を現していく様子は実に圧巻です。
山鉾建ての最も素晴らしい見どころは、釘を一切使わずに荒縄だけで木材を固定する「縄がらみ」という伝統技法です。
職人さんたちが脚立に登り、太い縄を呼吸を合わせて締め上げていくのです。
「鶴の大はえ」や「亀の胴」と呼ばれる美しい網目模様が木組みの表面に描かれていく様子は、思わず息をのむ美しさです。何百年間も受け継がれてきた職人たちの知恵と技術が、いま目の前で形になっていきます。
路地を進むと、南観音山の会所前では車方(くるまかた)や手伝いの方々が、重厚な車軸や台座の木材を丁寧に磨き上げ、点検していました。
また、鷹山の通りでは白いヘルメットをかぶった職人さんたちが集まり、真新しい真木(しんぎ)を大勢で支えながら慎重に調整を行っています。白や青の「鷹山」「南観音山」と書かれたTシャツや作業着を着た人々が、真剣な眼差しで汗を流す姿に、町衆たちの熱い誇りを感じずにはいられません。
ふと上を見上げると、高所作業を行う職人さんの頭上には電線が複雑に交差し、現代のビル群が背後にそびえ立っています。
何百年も変わらない伝統の技と、現代の都市空間が絶妙に交差する風景こそ、京都の祇園祭ならではの魅力と言えると思います。
通りかかる地元の方々や観光客も足を止め、徐々に立ち上がっていく木組みを見上げながら、完成への期待に胸を膨らませていました。
夕暮れが近づくにつれ、木組みの骨組みには真木が立ち上がり、提灯が飾られて、少しずつお祭りの装いが整っていきます。
釘を使わずに縄一本で巨大な山鉾を組み上げる技と熱気。完成された巡行の美しさだけでなく、こうして人の手によって祭りを作り上げていく過程にこそ、祇園祭の本当の深みがあるのだと感じました。
夏の京風情と人々の絆に触れることができ、とても心に残る素晴らしい一日となりました。