京都の北野天満宮のほど近く、ひっそりと、しかし力強く佇む千本釈迦堂(正式名称:大報恩寺、ここは、派手な観光地というよりは「本物」が残る場所といわれています。
京都市街地において、数々の戦火を逃れて「最古の木造建築」を現代に伝える奇跡のようなお寺です。
千本釈迦堂の最大の魅力は、1227年に建立された本堂(国宝)です。 京都を火の海にしたあの「応仁の乱」でさえ、この建物だけは焼け残りました。
柱には、当時の侍たちがつけたといわれる刀の傷跡が今も生々しく残っており、激動の歴史を肌で感じることができます。
そしてこのお寺を語る上で欠かせないのが、日本一有名な奥様(?)といえる「おかめさん」の伝説です。
本堂を建てる際、棟梁の高次が大切な柱を短く切りすぎてしまいました。
絶望する夫に、妻の「おかめ」は「枡(ます)を継いで調整すればいい」と名案を授けます。
その結末は、夫は無事に大役を果たしますが、おかめは「女の知恵で成功したと言われては夫の恥」と考え、完成を待たずに自害してしまうというお話。
現在、おかめさんは「縁結び」「夫婦円満」「厄除け」の守護神として信仰されています。
境内にはふくよかな笑顔のおかめ像があり、お参りするとこちらまで穏やかな気持ちになれます。
また祭事としてよく知られているのが京都の冬の風物詩、12月の「大根だき」。
釈迦が悟りを開いた日にちなみ、熱々の大根を食べて無病息災を祈ります。
そして何よりも地域に根ざした祭事であるのが節分祭。
京都に数ある節分行事の中でも「最も優しく、少し泣ける」と言われるユニークなものです。
通称「おかめ節分」、主役は豆を投げる人でも鬼でもなく、あの「おかめさん」です。
最大の見どころは、本堂(国宝)前の特設舞台で披露される「おかめ法寿舞(ほうじゅまい)」。
通常、節分といえば「鬼は外!」と豆をぶつけて追い払うのが一般的ですが、ここでは少し違います。
暴れまわる赤鬼・青鬼たちの前に、ふくよかな笑顔のおかめさんが現れ、おかめさんのあまりに徳が高く、慈愛に満ちた微笑みに、鬼たちは戦意を喪失。最後には鬼たちが改心し、自らひざまずいて祈りを捧げるという、なんとも平和的な結末を迎えます。
「力で排除するのではなく、徳で包み込む」という、おかめさんの伝説に基づいた非常に京都らしい演出です。
最後に、なぜ千本釈迦堂では「鬼は外」と言わないのか。
千本釈迦堂の豆まきでは、「鬼は外」とは言わず「福は内」のみを唱えるのが習わしです。
これは、おかめさんの微笑みによって鬼がすでに退散(あるいは改心)しているため、追い出す必要がないからだと言われています。
住所 京都府京都市上京区溝前町1034 (今出川通七本松上ル)
アクセス方法 市バス「上七軒」バス停下車、徒歩5分
拝観時間 9:00~17:00(本堂・霊宝館の受付は16:00まで)
拝観料 境内は無料(本堂・霊宝館の拝観は大人 600円)