京都市上京区の「大将軍商店街」、通称一条妖怪ストリートを歩いてきました。
この商店街が「妖怪ストリート」を名乗るのには、1200年以上の深い歴史的根拠があります。
舞台となる「一条通」は、平安京の北端に位置していました。
平安時代、使い古された道具が精霊となり、夜な夜な行進する「付喪神(つくもがみ)」の百鬼夜行がこの道を通ったという伝説が残っています。
いわば、ここは人間界と異界の境界線だったのです。
2005年、この歴史的背景を活かして地域を活性化させようと、店主たちが手作りの妖怪像を店先に設置し始めたのが「一条妖怪ストリート」の始まりです。
単なる観光客寄せのギミックではなく、「古くなったものを大切にする(付喪神への敬意)」という、日本の伝統的な精神が根底に流れています。
商店街を歩くと、ここでも「地方商店街の衰退」という日本の現実を突きつけられます。
かつては北野天満宮への参道近くとして栄えたこの通りも、現在はシャッターを下ろしたままの店舗が目立ちます。しかし、面白いのはその「寂れ方」です。剥げかけた看板、ひび割れた壁、そしてその陰からぬっと顔を出す手作りの妖怪たち……。
この「寂れた質感」が、かえって妖怪たちが潜んでいそうな妖しいリアリティを生み出しているのです。
最新のテーマパークのような清潔感はありません。
しかし、店主たちが自前で制作した、どこか愛嬌のある(そして時々ちょっと不気味な)妖怪像を見ていると、効率化だけを追い求める現代社会から零れ落ちた「遊び心」が、この静かな通りに守られているような気がして、不思議な安らぎを覚えます。
現在、この商店街が抱えている課題は切実です。
その一つが妖怪の「高齢化」。
20年前のスタート時に作られた妖怪像の中には、雨風にさらされて損傷が激しいものも増えています。
そして運営の属人化。
イベント(妖怪仮装行列「一条百鬼夜行」など)や像のメンテナンスは、有志の店主や大学生ボクランティアの熱意に頼っている部分が大きく、持続可能な体制づくりが急務です。
最後に「通過点」からの脱却。
北野天満宮への観光客は多いものの、この商店街をゴールにして訪れる人はまだ限られています。
世界的に人気の高い「YOKAI(妖怪)」というコンテンツを、いかに一時的なブームで終わらせず、地域の経済(買い物や飲食)に結びつけていくかが、今後の大きな分かれ道になるでしょう。
所在地: 京都市上京区一条通御前西入ル(大将軍商店街振興組合周辺)
交通機関:JR嵯峨野線「円町駅」から北東へ徒歩約10分
京福電鉄(嵐電)「北野白梅町駅」から南東へ徒歩約5分
京都市バス「北野白梅町」または「北野天満宮前」バス停から徒歩約5分